Chaos Smart

「私は、私が無知であることを知っている」 複雑性、物事の根本に関わる深い叡智をえるブログ

コーチングスキルpart4 『新しい視点を与える』

Skill 29 物語をつくる

相手から引き出さず、こちらから新しいものの見方や違う視点を伝える必要がある場合、一般論だけはダメです。一般論を無防備に聴くと危険だという反応を脳は示します。「人生は努力だ」といったら、努力以外のものは排除されてしまうわけで、そんなことを脳は簡単にキャッチしません。そこで、「物語」の登場です。「物語」が具体性を持った話であればあるほど「AはBである」をサポートする実が確かにそこにあったということを相手に示すことができるのです。それがいつも絶対正しいかどうかは別にして、正しい瞬間もあるということを相手が感じられます。また物語は頭に残りやすく、あなたの伝えたい「真実」が相手にはっきりと残ります。

 

Skill 30 枕詞を使う

言いにくいことをいうときに活躍するのが「枕詞」です。許可を取る枕詞。「ちょっといいにくいことがあるんだけど、言ってもいいかな?」相手は99%OKを出す。次に、相手のその行動がどんな場合でもマイナスなのではなく、あるひとつの視点から見る限りそうだということを伝える枕詞。「コーチングという視点からみると」「ひとつの可能性として」こちらの主張の及ぶ範囲が限定されているため、相手の抵抗感が薄れます。枕詞は相手にメッセージを伝えるときのハードルを低くしてくれます。また同時に、それを使うことで相手と自分に不必要な上下関係が生まれず、「パートナー」という関係に保つ働きもします。伝えにくいものでない場合でも同じです。

 

Skill 31 切り口を与える

次の3つの質問に答えてください。
「自分が仕事や家庭で妥協していることを5つあげるとしたらなにですか?」
「ちょっと長い間抱えている未完了を3つあげるとしたらなにでしょう?」
「あなたの境界線はどのくらい広いですか?」
どうでしょうか、なにか気づくことはありますか。妥協/未完了/境界線など、その人にとって耳慣れない「切り口」をなげかけることで、その人の人生を新しい角度から照らし出すことができます。たとえば、境界線というワードを人生に充てることではじめて、自分が日頃どれだけ人の理不尽な要求を受け入れてしまっているかが見えてくる可能性があるのです。コンサルタントのフレームワークが絶大なのは当たり前です。

 

Skill 32 広く多くをきく

優秀なコーチは、クライアントの問題の核心に一気に入り込み、数分で相手のものの見方を変えてしまう技術を持ちます。が、時として一カ所を深堀りするよりも、広く多くのことを聞きだすことが有効な場合があります。ひとつ質問をして答をきいては、また「他に気づいていることはないですか?」と聞き、「他のひとはどう思ってますかね」と、こちらからいくつかの切り口を与えてみる。すると現状に対して色々な角度から光が当たり、相手は複眼的に状況を捉えることができます。この行為は、ある一点しか見ずに凝り固まっていた脳の緊張が和らぎ状況が見通せます。逆にはじめから拡散しているような場合は、狭く深堀りをすること有効です。

 

Skill 33 なぜを伝える

上司なんだから部下ははじめから「聞く耳」をもってくれるはずだ、と無意識のうちに思い込んでると失敗します。部下は自分なりに納得した上で行動したいと思っています。部下を動かすのに必要なのは、「命令」だけではなく「説明」です。上司にとってはやって当たり前のことも、一度その理由をきちんと言語化する必要があります。「命令」が嫌ではなく、意義・意図を知らずに仕事をするのが嫌なだけです。人は価値が見えないものに本気にはなれません。ただ「やれ」ではダメです。「なぜそれをやるのか」を説明しましょう。影響力の問題ではありません。どれだけ影響力があっても、本質は「命令」だけではなく「説明」が必要です。

 

Skill 34 本当の提案をする

相手が「提案」と受け止めるのに何が必要でしょう。自分のいうことに有無を言わさず従わせようとするのは「命令」です。本来提案は、イエスというかノーというかの選択を相手に完全に委ねてはじめて成立するものです。ところが会社でも学校でも、上位にいる人が下にいる人に向かって、本当の意味で提案する姿をあまり見かけません。「プレゼンの資料に市場動向レポートを入れたらどうだ」「もう少し英語に力をいれたほうがいいんじゃないか」形態は提案ですが、ほとんど「命令」だったり、「おせっかい」だったりします。自分で提案と提案以外のものを区別して周りの人に対して使ってみてください。相手の反応がどう変わるかに意識を向けながら。

 

Skill 35 とんでもないリクエスト

目標の量を二倍にする、または二分の一の時間で達成するなど、あまりに大きな、とんでもないリクエストを受けて、視界が大きく開けたことはありませんか? 人はリクエストを受け、それに答えることで、はじめて自分があらかじめ用意した限界を打ち破ることができます。優れたコーチは、相手が一瞬耳を疑うような、とんでもないリクエストを、わくわくするような「ゲーム」として見せ、相手の心の中に火をつけることができます。ただし、そのリクエストに応えるだけの力は、すでに相手の中に存在しているという、相手への深い信頼感が必要だということは言うまでもありません。ピグマリオン効果は正にも負にも効果があります。あしからず。

 

Skill 36 コーチさせる

コーチングに煮詰まった際に効果的なのが、立場を入れ替えてみることです。クライアントに「たまには私をコーチしてもらえませんか?」と、こちらが冗談ではないというのがわかると、結構楽しくコーチングをやってもらえます。それまで自分のことだけで頭が一杯になり視界がすごく狭かったのが、コーチの問題に関心を向けたことで少し視野が広くなり、その後、自分の問題を少し違った感情でみることができたりします。部下に「どうすれば私はもっといい上司になれると思う?」と言ってみましょう。相手は一瞬「えっ?」という顔をしたあとに、きっと素晴らしいコーチングをしてくれます。相手のためにも積極的にコーチングをしてもらいましょう。

 

つづきは、こちら。

コーチングスキルpart5 『自発的な行動を促す』 - Caos Smart