旅の目的地とは、もはや場所とはかぎらない。 むしろ、新しいものの見方である。
滞在することが旅の目的となるホテルが溢れる世の中にあって、
『旅の目的地とは、もはや場所とはかぎらない。
むしろ、新しいものの見方である。』
出かける前から目的地の情報を豊富に与えられる現代のポピュラーな
「旅」において、人生の航路を変えてしまうほどの出会いや発見の感動は
得られるのだろうか。
野心ある探検家が、Googlemapも存在せず、観光写真が溢れるSNSもなかった
時代に、国家が探検家を支援し、貴族が探検家に投資をする。
投資家は私的な利益を期待するが、船が難破すれば財産を失う。
一種のギャンブルであり、しかし、成功の暁には、マテリアルな成果もさることがなら、なによりも、世界に「新しいものの見方」という公益がもたらされてきたはず。
体力と知力と気力に富むものが、探検の旅に出るということにおいても、命をかける
という点で、富める者が犠牲を払う精神を見ることができる。
1778年ヨーロッパ人として初めて、ハワイ諸島を発見し、ニュージーランドの海図を作成し、世界周航の公開日誌を後世に残した偉大な人物。
だけど、ハワイの神聖さに対して、自分を自分以上のものに見せたことで、殺害されたキャプテン・ジェームズ・クックは、「これまでの誰よりも遠くへ、それどころか、人間が行ける果てまで、私は行きたい」と、記している。
アイルランド生まれの南極大陸横断という偉業を成した、アーネスト・シャクルトン。彼は、探検隊の募集広告のコピークリエイティブと5000人以上を集めた成果、1年8ヶ月に渡って隊員27名を1人も欠かすことなく、絶望的な状況下で奇跡の生還の全員生還という成功を収めた手腕と統率力が、リーダーシップのお手本のような英雄だが、それよりも素晴らしいことをもたらしている。
「記憶のなかで、私たちは豊かだった。見かけの虚飾など突き破った。
私たちは苦しみ、飢えながらも、勝利した。腹這いになって栄光をつかみ、大きく成長した。光り輝く神を見たし、自然の物語を聞いた。人間の裸の魂に触れたのだ。」
この手記にあるように、自分の限界が試される旅で、シャクルトンは、もてる資源をすべてフルに発揮し、神谷自然や人間の魂の本質を掴んでいる。
これは、極限状態における人間の行動や考え方の手本として、示唆に富んでいて、
学術的な成果ばかりか、生きる意味や知恵という宝物を持ち帰った旅人の高貴なふるまいの中にノーブレス・オブリージュが課せられている態度を見ています。
現代において、「秘境」のスペースはどれほどに残っているのか。
前人未到な地など殆どない私たちが、「旅」で手に入る新しいものの見方とは何か。
chaos smartな「旅」について考えます。
「旅」をつくる空間がいかに、chaos smartなのかを考えます。
空間でいえば、例えばの解答のひとつが、タヒチに誕生している。
ハリウッドの反逆児だった俳優マーロン・ブランド没後の10年にあたる今年に、
タヒチ島から専用機で20分、手つかずの自然に囲まれた、彼が個人所有していた
テティアロア環礁の一部をプライベート・エコ・リゾート「ザ・ブランド」として
オープン。
太陽エネルギーやココナツオイルによる再生可能エネルギーを中心とする、世界初の
ゼロ・エネルギー使用リゾート。
環境保護を目指しながら、都会以上に快適な時間と場所を提供するリゾートは、
エシカル志向の強い最近のトレンドとしてほかにも続々誕生している。
例えば、タイのシャム湾、カンボジア国境近くに浮かぶクッド島のエコ・リゾート、
ソネバキリ。昔からの原風景を残す自然環境の中に、ラグジュアリー・エコ・リゾート、36棟のヴィラ「ソネバキリ」がある。
合言葉は、「No news, No Shoes(ニュースを見ない、靴を履かない)」。
靴を脱ぎ捨てて素足で過ごすことができる非日常の快楽を保証する。
コンセプトは、持続可能で、地元に根付いた、有機的な、心身ともに健康な、学びがあり、刺激があり、楽しい、数々の経験。
環境への負荷を最小限に抑えるように配慮された場所で、日常生活で疲れた心身を癒しながら、学びも得られるリゾート。
ソネバと同様のコンセプトを持ち、マーロンの「ザ・ブランド」は、オール・インクルーシヴのリゾート。
人生が激しく動く、新しい物の見方を獲得する、
いわば、21世紀型ラグジュアリー・エコ・リゾート。